ポータブルスキルとは転用可能なスキル。英語ではTransferable Skillsともいいます。
ポータブルスキルは英文職務経歴書上テクニカルなスキルを補い関連スキルを強調するため、さらに同レベルの応募者との差別化を図るためには記載しなければならないスキルです。
ポータブルスキルと言えば就業後業務で培ったスキルを思い浮かべますが、それ以外にボランティア活動や、趣味、学生時代のアルバイトで得たスキルも対象として考えることができます。
ポータブルスキルは今まで自分が他人のために役立てることができたパーソナルスキル全般が当てはまるのです。
別の職種や異なった業界に転職を検討している場合、職務経歴書にポータブルスキルを当てはめて現在の業務とは異なっていても習得したスキルが適用できること、さらにスキルを利用して活躍できることをアピールするものです。
ポータブルスキルの重要性
自由フォーマットの英文職務経歴書を作成しポータブルスキルを書く際には、通常「Skills」や「Core Business Comppetency」というコラムを設けます。
Job Descriptionの職務内容で特定のスキルについて言及している場合はそのスキルを持っていることは書類選考上大きなアドバンテージになります。
スキル欄には業務に直接関係するテクニカルスキルや転用可能なポータブルスキルを箇条書きで記載します(Core Business competencyは通常短い文で簡潔に表現します)が、その際は、求人内容で要求されるスキルに沿う書き方をしなければなりません。
とはいえ、採用側の求めるすべての要求事項を満たすことは非常にまれです。
希望通りの人材はなかなか見つからない中、採用側においてポータブルスキルはテクニカルスキルを補完するもの、中間管理職以上であれば人を扱う能力(People Skills)として選考上重視されます。
1-1. Work Experienceで具体的な実績を述べる
ポータブルスキルはスキル欄に記載することで認識することができますが、裏付けとなる内容がなければ採用側には全く響きません。
例えばリーダーシップや問題解決力をスキル欄に書くのであれば、同時にそれらのスキルが伝わる実績や成果を示すことが必要です。
Work Experienceに直接表現できないスキルでも注目してほしいスキルはスキル欄、またはコアコンピテンシーとして記載することができます。実績から読み取ることができれば簡潔に書いてもスキルの信ぴょう性を高めることができます。
一例をあげます。
Led SNS campaigns effort to drive digital sales with online retail partners that resulted sales increase from JPY100M to JPY200M over a 12-month period.
Work Experienceで、オンラインキャンペーンの施策能力と成果を訴求した内容ですが「関係構築スキル」や「リーダーシップ」も持ち合わせていることが読み取れる内容です。
別項目にスキルとして訴求すれば強みとして活きてくる内容です。
1-2. ハードスキルとソフトスキル
ハードスキルとは
ポータブルスキルにはハードスキルとソフトスキルに大きく分けることができます。
ハードスキルは業務や研修で、職場以外では学校やセミナーを通じて知識を習得し直接業務に活かすことのできるスキルです。
ご自身の過去のスキルが直接活用できるハードスキルは、採用側でも優先度が高く経理部門での採用ならIFRSの知識や会計事務所での業務経験など、ハードスキルと呼ばれるスキルは実務レベルで特に重要視されます。
ソフトスキルとは
ソフトスキルはPeople Skills やパーソナルスキルと呼ばれ、もって生まれた才能や、いつの間にか身に着いた能力なども含まれ、人との関わる中で業務遂行をスムーズに行うためのスキルです。
例えば学生時代にアパレル店員のアルバイトをしていた人が食料商社のバイヤー職に転職を検討したとすれば、店員時代に身に付いた聞く力、問題解決力、チームワークなどは、仕入れの際に顧客の要望を的確に把握してサプライヤーとの交渉に活かせるスキルになりポータブルスキルとみなすことができます。
ポータブルスキルについて
では、具体的にどのようなスキルをポータブルスキルとして打ち出すことができるでしょうか。いくつか例を挙げてみます。
2-1. チームワーク(Teamwork)
組織社会の一員として業務を推進するにあたりチームワークは切り離せない内容です。
逆に考えれば、全ての人がチームワークの枠組みのなかで役割を演じていますので、単にチームワーク力があると言ってもピンときません。
同僚や相反する意見を持つクライアントも含め共通のゴールに向かって進む協力体制を築く力を示す必要があります。
成し遂げた内容がwork experienceから読み取ることができればそれを改めてスキル欄で強調することができます。
2-2. リーダーシップ(Leadership)
プロジェクト決定から導入までリーダーシップを試される機会は頻繁に訪れます。
とはいえリーダーシップとはトップダウンで物事をけん引してきたことだけを指すものではありません。
上に立つことでチームをまとめることだけではなく、同じチームメンバーの一人としてメンバーのやる気を引き出し、目標を掲げチームひとりひとりの職責を明確化して業務を委任できる力、さらに問題が生じた際に頼れる存在になり成果を達成するためのキーマンになることがリーダーシップです。
チームの一員として実務こなす能力とまとめ上げることができる人材は貴重です。
2-3. タイムマネージメント(Time Management)
組織ではいかに効率よく働くかが求められます。
Time is money と言われるように会社にとって「時間=お金」なのです。
業務に優先順位を付けスケジュール管理をするということは各個人の抱える業務が異なる中で教え込めるものではありません。
タイムマネージメントは業務の生産性を高めるうえでも重要です。
2-4. 問題解決力(Problem Solving)
問題解決力とは単に問題を解決することではありません。
問題の原因がどこにあるかを突き止め解決策を提示する力が問題解決能力です。
「問題の原因を突き止めるためには、なぜを5回さかのぼれ」言われますが、真の原因を突き止め解決していくことで、ボトルネックや非効率を解決する、あるいは停滞していた議論を再開しプロジェクトを軌道に乗せる力こそが問題解決力といえます。
2-5. ライティング(Writing)
ライティングはヒアリング力と共にコミュニケーションスキルのひとつ。
実際に話すことと同様、場合によってはそれ以上重要な役回りを演じるスキルであり対顧客対応においては個人や会社の印象まで決まります。
ライティングは情報共有やアーカイブでその役割は大きく、「明確」に「簡潔に」メッセージを伝えるスキルとしてスムーズな業務推進の助けになります(英語でいうClear and Conciseです)。
2-6. 関係構築(Relationship Building)
チーム内、他部署、あるいは顧客と良い関係を構築することはどの会社でも必要不可欠なスキルです。
関係構築とは単に関わったことを示すだけでは不十分。
各ポータブルスキルに言えますが、ソフトスキルは程度の差こそあれ各自が持ち合わせているものでありスキル欄に記載するためには他者よりすぐれたスキルであること明示しなければ口先だけのメッセージになってしまいます。良い関係を構築したからこ達成できた結果が職務経歴書にあることがキーです。
クライアントとの信頼構築が新規ビジネスにつながったなど、具体例がWork Experienceで示されていることでより信ぴょう性を高めることができます。
2-7. 創造性(Creativity)
創造性というのは何かをデザインするという意味ではありません。何か問題が生じたときにどのようにその問題に取り組みどう解決するかが問われます。成果を出すために一丸となって進めるチーム作りや顧客を納得させ満足度を高める手法の提案も創造性といえます。直面した問題をユニークな切り口で打開していく力こそ柔軟な創造性です。
ハードスキル・テクニカルスキル
ソフトスキルだけがポータブルスキルではありません。
プレゼンテーションスキル、マーケティングスキル、セーするフォースやSAP業務ソフト運用方法、CADソフトの知識、アプリのコーディング知識、工作機械の操作など、OJTや専門学校、あるいは自己学習によって習得しているスキルで業務遂行に直接生かせるすことのできるスキルはハードスキルやテクニカルスキルと言われます。会社が変わっても関連業界では活かすことのできるポータブルスキルです。
ここでは、ハードスキルの代表的なポータブルスキルについて説明します。
2-8. 分析力(Analytical)
大局をみながら要因を分析する力というのはビジネスを推進するうえで必要不可欠な力です。
社内、業界、社会には様々な情報が溢れています。情報をつなぎ合わせて現在の状況を分析する力、問題が生じていれば関連するデータを収集しそこから論理的なソリューションを導く力が分析力です。
データや状況を把握してボトルネックを解消し生産性を上げた実績をはじめ在庫回転率を上げキャッシュフローに貢献した実績やマーケティング資金の効果的な活用など、多方面から物事を考え的確に読み解くことで会社の改革や売り上げなどに貢献した力であり事例をWork Experienceに記載することで分析力を訴求することができます。
2-9. プレゼンテーション(Presentation)
プレゼンテーションは対顧客との打ち合わせでのみ必要となるスキルではありません。
ここで言うプレゼンテーションとは自己プレゼン力。チーム内のミーティングやマンツーマンミーティングでも状況に応じてコミュニケーションの組み立てを工夫し信頼を獲得していく力です。
会議の出席者に対して提示する資料の作成で現れる表現力、内容に信ぴょう性を与えるデータの収集力、打ち合わせの間傾聴させるようなコミュニケーション能力がプレゼンテーションスキルです。
2-10. マーケティング
マーケティングもデジタル化が進んでいます。
現在では、従来のフィールドマーケティングで活用されていた店舗の売上や展示会、セミナーの出席者アンケート分析力はもちろん、MAの知識やソーシャルメディアを活用したマーケティング、SEO・SEM マーケティング、ecommerceのセールス分析力など、行動パターンが多様化する中で顧客獲得に必要なマーケティング力は幅広い知識が必要とされるポータブルスキルです。
ポータブルスキルの書き方
3-1.「Work Experience」と「Skills」を同期させる
ポータブルスキルはどのように書けばよいでしょうか。
まず最初に、募集要項を読み込むことです。募集している職種で不足しているテクニカルなスキルを補うため、テクニカルスキルに付加価値を与えて他の候補者より優位に選考を進めるためにポータブルスキルは必須です。
前述の通りポータブルスキルは単に言葉を並べるのではなく背景を説明することが重要です。
コスト削減金額、不良品発生率、顧客満足度など指標を説明に含めなければ納得させることはできません。営業職であれば、営業力はポータブルスキル。異業種への転職であっても成約数、売り上げなどの数字を残せる根拠が伝わる内容になっていることが必要です。
「Core business Competency」で能力を要約する場合も、「Skills」に書く場合の様にWork Experienceの内容が変われば変わらなければなりません。
Work Experience(職歴)の書き方については「英文履歴書の職歴で差別化。職歴で成果を示す方程式とは?」で詳しく説明していますので、参考にしてください。
3-2. 求人広告ごとにスキルをカスタマイズする
とはいえ、募集要項を読んで活かすことのできるスキルや能力を絞り込み、中身の濃い職務経歴書に仕上げる必要があります。
ハードコピーを提出する場合は限られた紙面を有効に活用する意味もありますが、オンラインで応募する際にも採用担当はHR業務が追加業務になっていることを考慮し簡潔に必要事項をまとめるようにしてください。
ポータブルスキルはレベルに差は合ってもほぼ全員が持ち合わせたスキル。
関連性があり業務により貢献できるスキルを絞り込み、優先順位を付けて欠くことが求められます。
まとめ
業界や職種を変えるといった転職活動では、その業界で活躍してきた求職者と戦うことを考えれば生易しいものではありません。
とはいえ、今まで人付き合いの中で生かされたパーソナルスキル全般を対象に見直しすれば、思いつくことも多いのではないでしょうか。
チャレンジングな転職で活路を見出す場合に必要な「ポジティブシンキング」。
Work Experienceの見方を変えることで募集職種の業務に役立てることのできる独自のコアコンピテンシーをもう一つ作り上げスキル武装できるのもポータブルスキルです。